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フヂちゃん66:船の中_a0229930_18182910.jpg

いっぽう、カワセミ号のお腹から船の中に吸い込まれたフヂちゃんは、暗い穴の通路を抜けて、奇妙な部屋の天井から下に落ちました。

先に吸い込まれた荷物が積み重なっていたのが、良いクッションになりましたが、荷物の隙間に身体が挟まってしまって、中々身体の自由が利きません。

フヂちゃんが荷物の隙間から抜け出そうともがいていると、周りに何やら人の形をした影のような物が大勢居るのに気が付きました。

様子はソドムと似てますが、胸の当たりにロウソクの炎のような、ユラユラとした明かりの揺らめきが見えます。

もしかするとこれが、お父さんが話してくれた「ソチ」なのかもしれない、と、フヂちゃんは思ったのでした。

「ソチ」のような人影は、部屋の中の荷物をそれぞれ別の部屋に運んで行きます。天井から出ている二つの眼と、数本の腕が彼らを監視し、仕事を指示しているようです。

そのうち、数匹の「ソチ」がフヂちゃんの所に歩み寄って来ました。天井の目玉もフヂちゃんを見ています。どうやらフヂちゃんをどこかに運ぼうとしているようです。

逃げようにも、どこへも逃げられないフヂちゃん。不安に押しつぶされそうになったフヂちゃんはふと、自分のカバンの中に、手を入れたのでした。

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カバンの中には何が?
# by yamadorikoubou | 2013-01-13 01:14 | フヂちゃん
フヂちゃん65:わかったかい、バンコ_a0229930_1949819.jpg

フヂちゃんを、悲鳴ごと呑み込んだカワセミ号は、貨物ハッチを閉じました。

魔女:「総員乗船、配置に付け。」

手下達は、次々にカワセミ号の船内に入って行きます。最後に乗り込んだのは背広の男でした。

魔女:「アンタのせいで、随分予定が狂ったよ。」「本当に、いつまで経っても使えない男だねぇ。」

男:「女の子をさらうなんて、気が向かなくてねぇ。」「それにタバコが吸えなくてねぇ・・・」

魔女:「ゴタゴタ云ってないで、さっさと中にお入り。」「それからね、今度私の船でタバコ吸ったら、すぐに外に放り出すからね。」「わかったかい、バンコ!」

バンコと呼ばれた男は、シブい顔をしながら船の中に入って行きました。

バンコ:「ああ、わかったよ・・・。」

魔女:「本流までは葉面航行、両翼巡航速度3あげ、見張りは特に上空警戒。」「この辺の森には馬賊は居ないがね、レンジャーの追っ手がかかってる筈だよ。」

カワセミ号は、浮かせた船体を大きく傾けて急旋回すると、落ち葉の川に向かって飛んで行きました。

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# by yamadorikoubou | 2012-12-02 21:07 | フヂちゃん
フヂちゃん64:最後の荷物_a0229930_19421912.jpg

男:「お嬢ちゃん、良く覚えてたねぇ。」「古本町の駅で、一緒に電者に乗ったねぇ。」

フヂちゃん:「そのタバコの変な臭いで思い出したの。」「オジサン、だれ?」

フヂちゃんからの質問を聞いた男は、渦巻く眼をグルグルさせながら、イライラとした口調で云いました。

男:「それはねぇ・・・誰だろうねぇ・・・ワタシは一体、誰なんだろうねぇ・・・・」

魔女:「その男は、昔を無くしているんだよ。」

カワセミ号の上から、魔女が云いました。「昔を無くす」なんて、変な言い方だなってフヂちゃんは思いました。

魔女:「それより、さっさと荷物を船に積み込みなさい。」

フヂちゃんの背負っていたベットと布団と枕は、カワセミ号の腹のハッチの中から伸びてきた、三本指の手に掴み取られて、船の倉庫に吸い込まれて行きました。

やっと、鼻にかかっていたカバンを外すと、ハッと何かに気が付いて、カバンの中を開けて見ようとするフヂちゃん。

フヂちゃん:「もうふ!!」

魔女:「さあ、アンタが最後の荷物だよ。」

三本指は、カバンを開けようとするフヂちゃんを捕まえて持ち上げると、カワセミ号の腹の中に放り込みました。

フヂちゃん:「きゃあ!!」

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オジサンの正体は?
# by yamadorikoubou | 2012-11-28 20:08 | フヂちゃん
フヂちゃん63:煙草の煙_a0229930_22535941.jpg

涙の溢れる眼で、改めて男の顔を見たフヂちゃんは、その容貌の異様さに気が付きました。男の眼が、まるで渦巻き模様のように見えるのです。涙のせいかと思いましたが、そうではないようです。

よく見れば、渦巻き模様は目玉だけでなく、体中のあちこちに渦巻いてるようです。それが気味悪く、フヂちゃんはその男から遠ざかりたいと思う気持ちから、魔女のカワセミ号へ向かってヨタヨタ歩き出しました。

背負った荷物は重く、腕がちぎれそうです。鼻に掛けたカバンは軽かったのですが、臭いのきつい煙が漂ってきて、くしゃみを何回もする度に、鼻から落ちそうになるのでした。

漂う煙は、男が吸っている煙草の煙でした。男は自分がはいた煙に囲まれてご満悦です。そして傍に居た手下のソデムに向かって喋り始めました。

男:「ワタシは、この煙が無いと苦しくてねぇ。」「近頃はねぇキミ、電者に乗るのも禁煙でねぇ。」「もう、気が変になりそうだったよ。」

それを聞いて、フヂちゃんは思い出しました。今日、父さん母さんと一緒に電者に乗った事、降りてから山を歩いてた事、魔女に鳥にされてここまで飛んできた事、そして・・・

フヂちゃん:「私、オジサンの事知ってる!」「オジサン、私が電者に乗った駅で、一緒に電者に乗った人でしょう!」

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オジサンの正体は?
# by yamadorikoubou | 2012-11-24 23:43 | フヂちゃん
フヂちゃん62:ちょうど良いカバン掛け_a0229930_0111896.jpg

フヂちゃんは魔女の手下、ソデムの姿になっています。魔女が魔法をかけたに違いありません。フヂちゃんは魔女の奴隷として、一生働かされるのでしょうか?

魔女:「驚いてる暇は無いよ。さっさと云われた事をしなさい。」「そのベットと布団と枕は、これからアンタが使う物だからね。自分で運ばなくて誰が運ぶかね?」

木のベットは組み立て式になっていて、分解と結束を手下の一人が手伝ってくれます。

フヂちゃん:「ありがとう。でも、どうして私、こんな所でこんな姿をしてるのか、教えてくれない?」

フヂちゃんはまだ、鳥になったショックから立ち直っていないようで、状況が呑み込めていないようです。しかし手下のソデムは何も話してくれません。フヂちゃんは込み上げてきた悲しい気持ちで、胸がいっぱいになりました。

するとそこに背広の男が現れて、フヂちゃんに話しかけました。

男:「お嬢ちゃん、大事な物をお忘れだよ。」

それはフヂちゃんの肩掛けカバンでした。それを見たフヂちゃんは自分が誰で、何があったのか、思い出して来たのです。

フヂちゃん:「わたしのカバン!」

男:「返してあげようねぇ・・・がしかし、こりゃあ手が塞がってしまって、大変だねぇ。」「おや?こんな所にちょうど良いカバン掛けがあるよ。」

そう云って男は、フヂちゃんの尖った鼻に、カバンの紐をかけました。すると、フヂちゃんの眼からは大粒の涙がポロポロと、ながれたのでした。

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泣かないで、フヂちゃん。
# by yamadorikoubou | 2012-11-22 00:38 | フヂちゃん